2013年3月10日日曜日

緊張の先にあるもの




先般、第3回目、バロックリコーダーエクスペリエンス「フランスバロック音楽の深層」を
無事に終了致しました。(兵庫県西宮市甲東園)


まずは、お越し戴いたお客様に御礼を申し上げます。
誠にありがとうございました。






3年を経て、徐々にお越しを戴ける方々が微増の傾向にある事が、私には非常に感慨深く
感じます。また、その中でもとりわけ若いゼネレーションが増えつつあるのも嬉しく思います。


バロックと言えど、多様ですので、テレマン、ヘンデル、バッハなどの演奏とは種々対極にある
作品群がフランス盛期にあると言えます。またその専門技術と演奏法、音程感は上記のそれと
全く異なります。


作品の音楽構成や音楽史上重要な人物であっても、有名か無名か、という辺はプランニング上、
確かに重要なのは承知の上、バロックを現場で学び、育てる役目にもある側の人間として、
少なくとも継続の覚悟は致している次第です。


本番でご説明した通り、オトテール、クープラン等の至高の芸術作品は一朝一夕の仕上げは
不可能であり、なかんずくフィンガリングやビート、様式感、音程の微減微増、イントネーション等、
ようやるわ、という程に熟成するものなだけに、また今回は415ヘルツにヤングでの調律であり、
去年は414.5ヘルツでバロッティという選択でしたが、これがプログラムの調性やリコーダーの
「くせ」の点でも楽曲調整上とても重要なのです。
平均律などは概念には毛頭ありません。吹奏楽団ならまだしも室内楽では非常に美しくない
ためです。


素敵な品を沢頂きました



人間としての緊張は当然のこと、今回はストイックに過ぎ、少々気持ちが悪くなってしまったという
軽い事件が起こりました。舞台上に於ける当方の事象です。

例えば、重い3拍子の楽曲の裏拍で使用される跳躍のあとの「シ」の四分音符を、
メインで使用した比較的新しいヴォイスフルートで、いかに適切音程、音量で鳴らすか、
等がその側面です。

あくまでも音楽的な問題であり、楽器的に逃げるわけにもいかず、孤高の空間に何回か
差し掛かったものです。なんでこんなにシンドいのか。

身体を自由に動かして、適当に吹き散らかせばリコーダーなどは楽勝な楽器なんですが、
終始一貫をバーバーバーバー笛を吹くのが非常に嫌いな傾向(特に他楽器の専門家)の方、
数名からのご支持は、それは報われた瞬間でありました。

フランスバロックの作品は、古楽にしか出来ない不便ゆえの高等技術の矛盾と成立でしょうか。
キーが助けてくれない原始的なハードを持ち合わせた楽器に技術で如何に高貴な作品に
音楽的に向かい合うか、という事でしょう。


ゲネの風景



手前味噌をお許し下されば、他楽器の専門家の方々に、
「こんな専門的なバロックがかんさいで聴けるようになったなんて~」というお言葉を
頂戴した折には、報われた気がしました。

国内で言えばトウキョウとの相対的な層の薄さでしょうか。
本場でも勉強経験者の激的な少なさも、関係は無きにしも、でしょう。

また、いくら研究し、練習したところで、お越し戴けないわ、他分野の専門家にも参照に
されないようでは、心も折れ、辞めてしまうことでしょう。


それだけに、このシリーズもたかだか3年ですが、頑固にド専門をお伝えして来て
良かったのかと思います。



何より、意志が薄弱になりそうなわたしを

叱咤激励してくれる若きプロの士気の高いお弟子の皆さん、
いつも足繁くお通い戴くお客様、
愛好家のお弟子の皆さん、

そして
高次元でスキルの高い通奏低音のふたりの共演者、
私の細かい微妙な要求にプロとして応えてくれる楽器製作や調律の匠の方々、

全ての方々の協力があっての事だと、そして、つくづく自分では何も出来ない、と
皆さんに深く感謝をしている次第です。

ありがとうございました。